今朝 いつもより早く目覚めた。
目覚めたときに足に違和感が・・
寝る前に直したシーツのシワが、右足と左足の間に絡まり足が伸ばせない。
夏の汗で濡れた布団もしくは、湿った服を着てしまったときのような気持ち悪さである。
「うー。」などと、唸りながら足をもぞもぞ。
シーツを直さないと二度寝ができないではないか と頭をぐるぐるさせながら足をもぞもぞ。
ようやっと 足と足の間で壁を作っていた薄くて、柔らかい布製の壁はとれ、ぐいーと足を伸ばすことができた。
この一連の動作の最中、とある物語をつくった。
男と女、二人は初めてのデートの帰り道。
駅まではこの細い路地を一本道。
初々しい二人
周囲には人の気配もない。
手を繋ぐなら今である。
男は右手を伸ばし
女は左手を伸ばした。
カツン
と爪の先が固いものにあたる音がした。
先ほどまで何もなかった道には壁が一つできていた。
それは、アクリル製の透明な壁、駅の方にも来た道を振り返っても、壁であった。
上は4mか5mかわからないが、ジャンプして届く場所に壁の終わりはなかった。
二人の男女は壁越しにキョトンとしている。
それがおかしく、笑う。
先ほどまで手を繋ごうと緊張していた二人は笑った。
なんとなくおかしくて。
だが壁は気になる。
別に圧迫する感じではないが壁一枚で二人の距離が遠くなったようで。
壁をよくよく見ると小さい穴がいくつも空いている。
声は届くようだ。
話せることがわかったので、駅に向かいつつ歩くことにした。
今日のデートのことを話した。
壁のおかげなのか、緊張せず話せる。
駅の近くまできた。
彼の方が 手を繋ぎたかった とボソと漏らした本音。
彼女も同意を込め 頷く。
そのとき、壁がなくなっているのに気づく。
確かにあった筈の壁。
だけど今は無い。
二人は共に手を伸ばし、手と手が繋がった。
二人の顔は照れながら笑顔になった。
残り少ない距離ではあるが、この手を離したくないと願う男女。
だがしかしあの壁はなんであったのだろう?
二人の心の距離だったのか?
疑問は残るが、今は忘れよう。
あの爪に当たった、アクリルの寂しげな感触だけをそっと心に置いて。
はずい話を作ってもうた。